松原賢+下沢敏也「火と水」銀座一穂堂 2018.11.9(fri)~11.17(sat)
松原賢・下沢敏也二人展-「土」「水」「火」そして「風」「空」-
画家の松原賢と陶芸家の下沢敏也が出会ったのは2年前、札幌で開催された茶会の折である。松原は蝦夷富士と呼ばれる北海道の「羊蹄山」を描き、下沢氏は高さ140㎝のオブジェ作品「Re-birht (起源)」を展示した。前者は羊蹄山の土を混ぜて描き上げた泥彩画であり、後者は北海道の原土(赤土)を精製せずに焼成し、大きなひび割れや炎の痕跡も荒々しい、土の質感そのものを生かしたダイナミックな作品である。その両人を引き合わせたのが、茶会の席主を務めた林屋晴三氏であった。
松原は、これまで「音」をテーマに抽象作品を制作してきたが、「林屋先生の茶席に深く関わらせて頂く機会を得て、床掛けの作品制作のため改めて、山や渓谷、川、海の取材が始まった。特に一年前(2013年)から始まった富士取材のうち今年初めヘリコプターで空からの取材で自然の風景は水が創っていると実感した。心象と実感が一致して、心の蔵の種子が溢れ「景」が生まれた」と語る文章は興味深い。松原は、自然をテーマに具象画を制作し始めたが、やがて湖水の水面に現れる大気の響きを表現した抽象画「水景」へと向かう。それは、目には見えない天地の気韻を表現する松原独自の世界である。
一方、北海道を代表する陶芸家・下村敏也は、2011年北海道文化奨励賞を受賞、その活動は国内に留まらず、韓国、中国、ニューヨークと幅広い。下沢の作品は、北の大地の壮大な時間の流れの中から、生命の記憶を探り出そうとする。下村にとって、陶芸とは土の生命を創造することであり、同時に北の大地に生きる自分自身を問うことでもある。
今回、松原は水が創り出す自然の風景を土(泥彩画)に委ねた作品「景」「水景」を、下沢は土(北の大地)を火に委ねた陶箱、花瓶、茶碗などの作品を展示する。この「地(土)」「水」「火」そして「風」「空」は世界を形成する五大元素であり、その世界観にまさに二人は挑戦している。
森 孝 一 (美術評論家・日本陶磁協会常任理事)